なかなか直接現場に立つ機会も減りましたが、動けるときはなるべく現場に立つようにしています。
技術を落としたくないのと、単に楽しいから。
雪国では必須の冬囲いという作業があります。
雪の重みによる枝折れを防ぐためのものですが、今や半分は風物詩となっています。
代表的な『かごあみ』

鳥カゴのように見えるからそう呼ぶのでしょうか。
竹を立て、頭を縄で止め、下から順に巻き上げていきます。
作業としては単純ですが、しっかりとした技術の成せる技です。
竹はツルツルと滑ります。
普通に縄を巻いただけではズリ上がったりズリ落ちたり、ガッチリと綺麗に編み上げることは無理です。
なぜそれができるか。
逆に竹だから出来るんです。
言っていることが矛盾しているようですが、きちんとした理由があります。
縄は竹とは反対に滑りづらいものです。
その滑りづらいものを、同じく滑りづらいものに巻きつけていたのでは、引っかかるばかりで作業はいっこうに進みません。
では「滑ったらガッチリ編めないと言ったじゃないか」と思うかもしれません。
ところが実際プロはガッチリと編み上げます。
どうしてそれが出来るか。
竹の’しなり’を利用しているからです。
縄を編むときに少し竹を内側に押し込みながら巻くと、竹の外に戻ろうとする力で縄がピンと張り、ズレなくなるんです。
どれくらい押すか、どの角度で巻き上げるか、飛び出してくる枝をその中にどう収めるか。
簡単に見えて、数こなして初めて身につくしっかりした技術がそこにあります。
作業しやすく、しっかりと木を守る方法として考えられた冬囲い。
それが季節を感じる風景となっています。
昔から受け継がれる地域ごとの生活の知恵というものには、いつも勉強させてもらっています。
